セカイ見聞録

~とある大学生の世界一周・人との出会いの記録~ Since2014.7.1

暗闇の湖で遭難・救助された話

ネパールの軽井沢、ポカラへ

首都カトマンズからバスで8時間、ネパールの軽井沢と呼ばれるポカラを訪れた。

ポカラはフェワ湖をたたえるリゾート地であり、多くの観光客が集まる。

 

ポカラで体験できる自然系アクティビティは数知れず。

トレッキング、パラグライダー、ラフティング、ジャングルサファリ…etc

 

今回、挑戦したのはカヤックだ。

カヤック体験といっても1日2時間のコースから4日間の長期のコースまである。

 

メンバーは自分と中国人の観光客(Chen)とインストラクターのメンズ3人。

川の上流からフェワ湖まで4時間あまりのコース。

雨期で雨が降り続くポカラでは珍しく一日中、晴天が続いた。

 

 

Chenとはカトマンズからのバスで知り合い、バスがポカラに到着してからは違う宿に泊まることに。

 

「ここで別れるけど、まぁポカラは狭い街だしまた会うよね」なんて話をしていたら街でバッタリ。

 

 

 

仕事の一週間の休みを利用しているChenはかなりスケジュールを詰めてパラグライダーやらに参加していた。

 

Chenから誘われてカヤックに挑戦することになる。費用は2500Rs(約2500円)。

 

 

14時すぎにインストラクターと共に川の上流へ出発…と思いきやローカルバスを30分待つことに。

 

そしてローカルバスに乗車。もし道が整備されていたら20分で着くところを1時間30分もかけて川の上流へ。

 

途中、バスは川を渡る。

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このバスは(もちろん)水陸両用ではないので、渡っている際はかなりきわどい感じ。笑

 

のろのろとオンボロバスは悪路を走り、上流に到着。

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結局、カヤックを始められるようになったのは16時過ぎから。

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ネパールの日没は19時あたり。カヤック体験の所要時間の4時間を考えると何やら嫌な予感はしていた。

 

 

はじめはバランスを取るのも一苦労だったが、だんだん慣れてくる初心者2人。

 

ネパールの大自然に囲まれ、ゆっくりカヤックで川を下る。

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カヤックはゆっくりと川を下って行く。比較的、流れが緩やかな川なので変化はないがなかなか楽しい。

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しかし3時間ほど漕いだところで喉の渇きが深刻になった。

 

…そう、ツアー会社の出発から5時間、一滴も水を口にしていないのだ。(水を入れたバックをカヤックのツアー会社に預けてしまった。水を持っている者はいない。)

 

 

 

そして動かし続けてきた腕が、というよりは体が急に重くなり呼吸が激しくなってきた。

 

時刻は19時すぎ。ちょうど川からフェワ湖に入ろうという時にこのような症状が見られた。

 

 

あと30〜40分も漕げばフェワ湖の対岸に到着というところだった。

 

インストラクターにAre you OK?と言われつつもそのまま漕ぎ続けた。

 

そして15分後、フェワ湖の中央あたりにさしかかった時に事態が悪化する。

手が固まり、パドルを握れなくなったのだ。(手は中途半端な開き方をして固まった。)

 

呼吸はさらに激しくなり意識が朦朧としてきた。

「これはさすがにマズイ」とインストラクターに緊急事態であることを伝える。

 

インストラクターはHey,No ploblem.と言ってきたがパドルが握れない状態でカヤックを漕げなくなっていることは明らかに異常だ。

 

体が動かせなくなり、あることに気付いた。

自分の体が寒さで震えている。

 

 

これは低体温症だと確信した。

 

低体温症については
以下日本旅行医学会トピックスより引用。

低体温症とは?

 低体温症とは、体温(深部体温)が2℃以上低下した状態をいいます。 人間は、体温が±1℃変化すると不調を感じ、±2℃で、変調をきたします。

低体温症の症状

 低体温症は体温の低下とともに以下の症状が現れます。

体の内部温度 37℃~35℃
寒気を感じ、動作が鈍くなる。シバーリング(寒さによる身震い)が起こる。

体の内部温度35℃~33℃
正常な判断力の低下し理論的な思考ができなくなる。

体の内部温度33℃~30℃
シバーリングがなくなり意識レベルはさらに低下し不整脈、筋硬直が起こる

体の内部温度30℃~28℃
意識の消失、腱反射の消失。

体の内部温度28℃~26℃
心室細動が起こる。

体の内部温度26℃
筋硬直の消失、そして死に至る。

 

 

インストラクターには、対岸から救助用のボートを出してもらうよう連絡を頼んだ。

(今の状態では筋硬直を起こして体が動かない自分を対岸まで運ぶ手段は救助ボートしかない)

 

しかしフェワ湖にはモーターボートなどなく、手で漕ぐ木製のボートを20分待たなければならない。そして湖の中央にいるため一帯は真っ暗。

 

なかなか到着しないボートを待っている間インストラクターとChenが自分の手を握り、温めようとしてくれる。

 

そして脱水症状の対処のため腹を下す覚悟で湖の水を飲むことを決意。笑

しかし手が硬直して水をうまくすくえず、インストラクターに飲ませてもらう。

 

 

朦朧とする意識の中で死の恐怖を感じた。

(後から引用の体温別の症状例を見ると30〜33℃まで体温が低下していたと考えられる)

 

 

 

「あ〜、こんなところで死ぬのは嫌だな。」

ふと天を仰ぐと満点の星空。人生ベスト3に入る美しい星空だった。

 

 

「雨天続きのポカラで唯一見れた星空が、暗闇のフェワ湖の中央だなんて皮肉だな。」などと考えつつも防水ケースに入れたiPhoneのライトを点灯して対岸に向け続けた。

 

 

 

そして、ついにボートが到着。

 

 

 

その後はツアー会社のオフィスで必死に暖をとった。

心配した現地人のおばちゃんが温かい紅茶を持ってきてくれたりとお世話になった。

 

 

Chenが撮った以下の写真を、後から見返すと緊急事態だったことを改めて実感する。

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いや、こんな時に写真を撮る彼は不謹慎だw

(多額の請求があるかと思った救助ボート代は300円だった。手漕ぎボートだから安い。)

 

体温が戻って少しすると一気に回復。

遭難騒動があって時間は遅くなったがChenとその旅仲間と夕食をともにする。

さっきまでの騒動がウソのように暴飲暴食をした。

 

 

そして肝心のフェワ湖の水を飲んだ件について。結局、腹は下していない。笑

 

 

今回の件はライフジャケット着用をしているから溺れない、水難事故は大丈夫そうだという意識でいたが、上流の早い流れに飲まれたときはライフジャケットがあっても危険だった。川の流れになす術なく飲み込まれる自分がいた。

 

そして低体温症も非常に怖い。

 

 

 

こんなことを書くとカヤックが怖いという印象を与えてしまうため以下の写真を。

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カヤックでの川下りはネパールののどかな自然を楽しむ手段としてはすばらしい。

川を下る最中に畑の手入れや釣りをする村民。橋の上から「こんにちは、どこから来ましたか?」と日本語で声をかけてくれる若者。

 

 

 

ネパールのポカラでは本当にゆっくりとできた。長期旅行者の沈没地としても短期の旅行にもオススメ。ベストシーズンである10月からの乾期に訪れるとよりよいだろう。

 

 

リアルタイムはカトマンズに戻り、インドビザ受領の準備中。

そして3〜4日後のインド入国に向けインド国境越えのルートを検討中。

 

「ネパール〜インドの国境を越えた途端にうんこ踏んだ」という旅仲間の話は本当なのだろうか?笑

 

では、また。